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令和4年度桜修館過去問 適性検査II問題分析

  令和4年度桜修館過去問 適性検査I問題分析 

桜修館受検生のみなさん、こんにちは。
桜修館セミナー 講師の山田です。

今日は、令和4年度桜修館適性検査IIの問題分析をします。

大きく路線変更した大問1

大問1全体として

算数。問題は全部で3題。桜修館作成の独自問題である。
近年の大問1が5題〜6題構成だったことを考えると、かなり問題数が減った。
その分、簡単な問題は皆無で、どの一問から始めてもそれなりに時間がかかる。
英字と記号の関係に関する問題1と、容器の球の個数に関する問題2、分配装置の本数に関する問題3からなる。

全ての問題が、プログラミング教育に関連している。プログラミング教育にはパソコン画面上のプログラム作成を通じて行うものと、パソコン画面を必ずしも必要としない手順 ( アルゴリズム )に関するものがある。今年の大問1はものごとの手順に関する出題であり、3問とも日常生活とはかけ離れた状況設定である。

また、問題1では英語教育と関連づけようとする工夫が見られる。
令和4年度は新学習指導要領の変更の影響を例年以上に強く受けた傾向となり、大きな路線変更といえる。
文科省から出題傾向に関する指示があったと推測される。

最大の変化は解答形式である。3問中2問が記述問題となった。
問題1は個数の数え上げによる割合計算、問題3はパイプの数え方そのものの説明である。場合の数の数え方は非常に多くのやり方が考えられるので、記述を通じて受検生の情報処理力・判断力・説明力を問う問題となっている。

大問1問題2

多くの受検生は問題1と問題3を避け、記述のない問題2から解き始めたのではないだろうか。しかしここで更なる罠がある。
問題2の根底には、高校数学の場合の数などで利用される二項定理で有名な ” パスカルの三角形 ” があり、設問で提示された分数だけから逆算することは困難といえる。例えばCの容器には6/16の球が入ったと書かれており、ここから160個中60個がCに入ったと読み取れるが、どのような仕組みで60個入るのかは、一番上のパイプに160個入れてから何段もたどっていかないと理解できない。
一応抜け道はあり、問題文中の分数と設問の分数を可能な限り同じ場所に並べると塞いだパイプの想像は可能だが、設問の分数である3/16や2/16になる保証はどこにもなく、あて勘で突破することになってしまう。ほとんどの受検生が解けなかったと言われる平成21年のシューズの問題を彷彿とさせる。
ともかく、要求される算数レベルがここ数年で最も難しい。記述を避けようとして選択式問題からはじめた受検生ほど、かえって多くの時間をロスしてしまったのではないだろうか。

大問1問題1

もちろん、問題1と問題3もそれなりに難しい。問題1は九段中等でよく出題される、情報圧縮に関する問題である。
ただし、英語表記と記号の間の関係を見抜くのにそれなりに時間がかかる上、ほとんど情報が圧縮されていない。
( 通常は50%以上の圧縮率だが、問題1では9%しか圧縮されない )
そのため、類題を解いたことのある受検生ほど、この考え方であっているのかどうか、不安になるだろう。

大問1問題3

問題3は解くだけなら3題の中では最も簡単であるが、最大の問題点は、自分が数え上げた場合の数を文章で説明することである。
私立入試の場合の和の場合、パターンが決まっているので、問題を見た瞬間に、6×5×4=120通り、などと手が動いてしまう受検生も少なくないだろう。
しかし、場合の数がなぜその計算になるのか、自分の言葉で正しく説明できる受検生は非常に少ない。
特に、説明するためには数式まじりの文章となるので、それらの十分なトレーニングも欠かせない。
数式まじりによる算数分野の説明問題は、令和2年以降2回目である。
最近の傾向なので、来年以降も警戒すべきである。

【大問1総評】
算数分野はどれも難しく、かけた時間と得られた点数が釣り合わず、コスパが悪い。
素直に大問2の社会と大問3の理科から解き始め、余った時間を算数に回すのが良い。

超絶情報過多な大問2

大問2全体として

社会。問題2題構成。都立中学が作成した共通問題である。
出題形式は例年どおりで、2題とも記述。令和2年度以降、社会の共通問題は3題から2題へと1問減った。
問題数が少なくなった分、問題文を熟読して1題ずつ正確に解答する必要があり、ミスは許されない。

問題1・問題2ともに、地方都市の問題である。
日本国内の東京都以外の複数の自治体名が出題されたのは、平成20年、平成29年、平成30年、平成31年に続き5回目である。
桜修館の昔の過去問では世界と日本の比較が多かったのにたいし、現在では地方と東京の比較や、地方同士の比較が多くなった。
このことから、桜修館や都立中の求めるリーダーシップが、世界に通用するレベルの日本のリーダーから、日本を支える東京のリーダーへとシフトしていると考えられる。桜修館の古い過去問を解いたり、銀本を用いて他校過去問を解いたりする際に、気をつけるべき点である。

当然だが、本文を読んでもそれぞれの地方の特色は書かれていない。
学校レベルの地理の知識は抜けがあってはならない。
( 福岡県と福井県を勘違いした、などがあると、解答が作りづらくなる。)

大問2問題1

問題1では雨温図が出題された。公立中高一貫校ではお馴染みの問題であるが、桜修館では初めて出題された。
( ただし、雨温図の情報である月平均気温と年間降水量が表やグラフの形で出題されたことは平成18年、平成25年と過去2回ある。)
当然だが、“ 北陸は寒い ” といった曖昧なイメージでまとめるのではなく、提示された雨温図を読み取って本文の情報と合わせよう。
このとき、月平均気温と年間降水量が、本文のどの部分と関連があるか考えることが重要である。
地域によって保存方法が異なることは常識的であるが、冷蔵庫や冷凍庫に恵まれた現代の子どもは忘れがちである。
日本の伝統を知り次世代につなげてほしいというメッセージだろう。

大問2問題2

問題2では、横軸に年間降水量、縦軸に年平均気温を表示するハイサーグラフが出題された。
ハイサーグラフは、平成25年に続き2度目の出題となる。
ハイサーグラフ自体は学校で学習するものではないが、グラフの書き方は、新学習指導要領で小学6年生の算数に追加された、ドットプロットそのものである。
大問1が英語やプログラミングを意識した問題が多いのと同様、最近新しく追加された学習内容が反映されたと考えられる。
過去問対策ばかりやっているとこうした視点が抜け落ちてしまう。
特に私立併願の受検生の場合、小学校の内容は親子ともに軽視しがちである。
しかし、適性検査の本来のあり方は、小学校で学習した内容を理解してうまく活用できるかを見抜くものである。
( 首都圏の適性検査は難しくなりすぎてその役割を果たせていないと思うが・・・)
学習指導要領の変更の影響を受けるのは当然で、令和5年度以降もこの傾向は続くだろう。
よくチェックしておくこと。

なお、大問2のように、複数の選択肢から好きなものを選んで解答する形式は、過去問で何十回と出題されている。
本年の場合は、グループが小さくまとまっていて説明しやすい小麦と米がおすすめである。

【大問2総評】
問題1・2ともに、きかれていることは簡単だが、きかれていることに答えるための情報がどこにあるのか探すのにひと苦労する。
令和3年度以前よりも、今年はその傾向がとくに顕著である。
旧センター試験の国語や英語のように、文章量をとにかく多くして受検生をパンクさせて難易度を上げようとする意図が見られる。

大問3

大問3全体として

理科。問題3題構成。大問2に続き、都立中学が作成した共通問題である。
問題1、問題2ともに小問2問構成。小問4題中3題が記述。
カレーやサラダ油の汚れを落とすにはどうすれば良いか、複数の実験結果から考えさせている。
この問題を理解するのに、なんと、一切の理科的知識が必要ありません。
平成30年以降その傾向が続いていたが、今年はとうとう試験管やスライドガラスのような道具以外で、理科の要素が登場しなくなりました。
理科離れが激しい日本で、身近なところから理科を感じてほしいとする意向の現れだろうか。
それにもかかわらず、問題は簡単とはいえません。
高い情報処理力が必要です。

大問3問題1

でんぷんの粒の拡大図からは、平成30年の花粉の問題が思い出される。
「これ、みたことある! なんか解けそう。」 過去問は受検生に勇気を与えてくれます。

過去問対策する意味のひとつです。

一方、「5分後」「5分間」「55分間」「60分後」と、似たような言葉が4つも登場します。
実験結果を読み解く以前に、何を聞かれているか正確にとらえることが大変です。

理科的な読解力を問う問題です。

また、理科分野では平成31年から4年連続して、表から数字を読み取る問題が出題されています。

すべての年度に共通しているのが、解答に必要なのは、表のうちの一部の数字であることです。

つまり、必要な情報と不要な情報を分けて、必要な情報だけから記述をまとめる必要があります。

ここでも、情報の取捨選択という形で、情報処理力が問われています。

実際に、問題1では8つの数字がありますが、(1)で必要な表の情報は一段目の「液体ア」と「液体ウ」の2つの数字のみで、(2)で必要な表の情報は「水だけ」と「液体ウ」4列目の4つのみです。

「液体イ」の数字情報は全く問題に関係ありません。

このように、ダミー情報が混じっているのも近年の理科の特徴です。

さて、必要な情報が抜き出せたらようやく計算です。理科計算はほとんどの場合、以下の2つしかありません。

①差に注目する

差は引き算によって計算できます。個数を比べるときに使います。(1)は引き算です。

②比に注目する

比は割り算によって計算できます。変化の割合を比べるときに使います。(2)は割り算です。

なお、塾生に解かせたところ、(1)で引くものがなく、あわてて2段目との差を求める誤答が目立ちました。

確かに引くものは表にありませんが、ちゃんと本文に1772粒と書かれています。

当たり前ですが、本文の数字も計算に使うことができます。

情報の見落としがないように、よく注意しましょう。

そして、計算式とその結果を必ず本文に入れましょう。

計算まじりの文章は、学校では一切習いません。

手持ちの対策問題集で記述をまとめる時、意識して練習する必要があります。

大問3問題2

今度はサラダ油の汚れについてです。

(1)は、問題1(1)と同様、差に注目する問題です。

ただし、表のひとつひとつの差を計算するのではなく、広く全体を見ることが重要です。

24滴までは重さが少しずつ減っていますが、28滴以降で逆に重さが増えていることに気づければ解答まではあと1歩です。それを文章にまとめるだけで
す。この問題の場合、細かい計算結果に触れるのではなく、文章のみで解答したほうがまとめやすそうです。常に計算結果を文章に入れればわかりやすくなるわけではないので、受検生のその場での臨機応変な対応が求められます。

(2)は問題1(2)と同様、比に注目する問題です。一見すると設問以前に具体的な数字がなく、焦ってしまったかもしれません。しかし、ラスト2行の「ただし、」以降にしっかり数字が書いてあります。

問題文や設問の「ただし、」以降が非常に重要な情報になっているのは桜修館に限らず、公立中高一貫校全体にいえることです。
欲しい情報がなくても諦めずにしっかり探す、情報検索能力がここでも問われています。

なお、一読すると洗剤が無限に薄まっていくように見えますが、試験管Aや試験管Bを確認すれば、洗剤のこさは隣の試験管の半分になっていくことがわかりますので、ちゃんと計算できることに気づけるでしょう。

【大問3総評】

問題1・2ともに、例年同様、差や比に注目することで式を立てることができる。理科の知識がほぼ必要ないので、算数のような感覚で解くことができる。理科が苦手な受検生こそ先に解くべきであった。3題の中で最も簡単なので、理科→社会→算数の順序が望ましい。

さぁ、しっかり対策を行い、
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